By Daisuke Kawasaki
「できれば決勝で見たかったな」
ギャラリーからこんな声が聴こえる。
運命再編は選択の物語。選択が物語を作る。
デュエルをすることと物語を紡ぐことが同じならば、デュエルの中にも選択はある。いや、デュエルこそが選択の連続だ。
大会前のデッキの選択から、プレイそのものも選択の連続である。
そして、その選択の結果として、どちらが決勝に進むかが決定される。
だが、ひとつだけ、決勝戦に選択肢がないものがある。それはどちらが勝利しても、群馬勢が決勝に進出するということだ。
同郷の群馬対決。トップ8プロフィールを見ていただければわかるように、両者とも同じショップをホームとするプレイヤーだ。
日をまたいで行われる事となった準決勝。互いにデッキリストが交換され、内容が確認される。
稲川の選択したデッキは、運命再編で大きく強化された青黒コントロール。対して、加藤が選択したのは緑単信心。
大技が中心である加藤にデッキにとって、青黒コントロールは決して与し易い相手ではないが、果たして、二人の選択はどのような物語を紡ぐのか。
Game 1
スイスラウンドで上位の稲川が先手。互いにマリガンはなし。
稲川は《思考囲い/Thoughtseize》をプレイし《森/Forest》が2枚に《ニクスの祭殿、ニクソス/Nykthos, Shrine to Nyx》《旅するサテュロス/Voyaging Satyr》《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》《巫師の天啓/Shamanic Revelation》《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》という手札から《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》をディスカードさせる。
返しで加藤はトップデックしてきた《エルフの神秘家/Elvish Mystic》をプレイ。さらに《森の女人像/Sylvan Caryatid》をトップして順調にマナを伸ばす。対する稲川も青マナ2つを含めた3マナを確保し、パーミッションの体制を整える。
加藤は《エルフの神秘家/Elvish Mystic》でアタックした後に《旅するサテュロス/Voyaging Satyr》をプレイ。《ニクスの祭殿、ニクソス/Nykthos, Shrine to Nyx》とのコンボで大量のマナをうみだすこのクリーチャーを稲川は《胆汁病/Bile Blight》で対処すると、またもセットランドでターンエンド。
マナクリーチャーを含めて6マナに達した加藤。そろそろ緑単の持ち味である大技を仕掛けていきたいが、いかんせん相手は大技に強い青黒パーミッション。《エルフの神秘家/Elvish Mystic》で地道にライフを削りつつ、《巫師の天啓/Shamanic Revelation》で手札を充実させる。
そして、続くターンに《世界を喰らう者、ポルクラノス/Polukranos, World Eater》をプレイ。しかし、これはマナクリーチャーごと《命運の核心/Crux of Fate》で流されてしまう。一時的にマナを失った加藤は、このほぼタップアウトの隙に大技を仕掛けることができず、《エルフの神秘家/Elvish Mystic》《旅するサテュロス/Voyaging Satyr》とマナクリーチャーの再展開にターンを費やす。
残り手札が2枚の加藤に、稲川は《思考囲い/Thoughtseize》。《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》と《起源のハイドラ/Genesis Hydra》という手札から《起源のハイドラ/Genesis Hydra》を捨てさせるとターンエンド。6マナと4枚の手札という稲川相手に加藤は2体のマナクリーチャーでアタック。地道なアタックの甲斐あって、稲川のライフは9に。
ここでトップデックした《世界を喰らう者、ポルクラノス/Polukranos, World Eater》を追加し、一気に押し込もうと考える加藤。しかし、稲川は探査で3マナ残した《時を越えた探索/Dig Through Time》を撃ってから、残った3マナで《英雄の破滅/Hero's Downfall》を《世界を喰らう者、ポルクラノス/Polukranos, World Eater》に。
そして、稲川はフルタップで《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》。
この《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》のプラス能力で《旅するサテュロス/Voyaging Satyr》を除去されてしまったため、返しで《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》を出し返す選択肢が加藤にはとれない。
《開拓地の包囲/Frontier Siege》を『カン』で設置する加藤だが、これは《エルフの神秘家/Elvish Mystic》ごとウギンのマイナス能力をX=4で起動され、追放される。
そして、2枚目の《時を越えた探索/Dig Through Time》がプレイされると、《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》と膨大な手札によるコントロールから加藤は逃れることはできないのだった。
稲川 1-0 加藤
Game 2
互いにマリガン無く、後手の稲川がプレイした《思考囲い/Thoughtseize》で開示された加藤の手札は、2枚の《森/Forest》に《ニクスの祭殿、ニクソス/Nykthos, Shrine to Nyx》《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》《巫師の天啓/Shamanic Revelation》《始源のハイドラ/Primordial Hydra》。ここから《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》がディスカードされる。
序盤の動きが抑制されたことで、再び稲川のペースの戦いとなるかと思われたが……ここで稲川の土地が2枚で止まってしまう。加藤は《森の女人像/Sylvan Caryatid》をプレイ。
まだ、稲川は土地を引けない。ついに手札が溢れてしまい、《悪夢の織り手、アショク/Ashiok, Nightmare Weaver》をディスカードさせる。返しで加藤がプレイしたのは、運命再編の注目カード、《囁きの森の精霊/Whisperwood Elemental》。
この、アドバンテージとクロックを増殖させ続けるクリーチャーを除去できるカードもマナも持たない稲川は、ゲームを終わらせることを選んだ。
稲川 1-1 加藤
Game 3
先手をとった稲川だったが、ここでマリガン。
2ターン目に《旅するサテュロス/Voyaging Satyr》を出してきた加藤にたいして、珍しく序盤に稲川が自身のターンに行動する。
3マナを使用しての《悪夢の織り手、アショク/Ashiok, Nightmare Weaver》。
まさに悪夢として準々決勝の相澤戦でも決定だとなったこのプレインズウォーカー。加藤の山札を削り落とし、返しで加藤がプレイした《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》で公開された《霧裂きのハイドラ/Mistcutter Hydra》すらも悪夢の中に飲み込んでいく。
《悪夢の織り手、アショク/Ashiok, Nightmare Weaver》の能力後に公開された加藤のトップは《囁きの森の精霊/Whisperwood Elemental》。これをドローすると、まずは《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》で《悪夢の織り手、アショク/Ashiok, Nightmare Weaver》へとアタックし、トップから2枚目の《ニクスの祭殿、ニクソス/Nykthos, Shrine to Nyx》をセットしつつ5マナを捻出して、X=3の《始源のハイドラ/Primordial Hydra》をプレイ。この能力で《荒野の後継者/Heir of the Wilds》を戦場に出す。
一気にクロックを膨れ上がらせた加藤。対抗すべく稲川は《悪夢の織り手、アショク/Ashiok, Nightmare Weaver》のマイナス能力で悪夢の世界から《森の女人像/Sylvan Caryatid》を呼び戻す。
一方の加藤。膨れ上がったのはクロックだけではない。一気に増えた信心を利用して《ニクスの祭殿、ニクソス/Nykthos, Shrine to Nyx》から6マナをうみだすと、再び《ニクスの祭殿、ニクソス/Nykthos, Shrine to Nyx》をセットして、2回目の能力起動で合計10マナをうみだす。
このうちの5マナを使用して、《世界を目覚めさせる者、ニッサ/Nissa, Worldwaker》をプレイ。これは看過できず《解消/Dissolve》をプレイする稲川なのだが、これで残るは《沼/Swamp》1枚となってしまう。残る5マナで《囁きの森の精霊/Whisperwood Elemental》をプレイする加藤。
これは当然戦場に出ることが許可され、続くアタックで加藤は《悪夢の織り手、アショク/Ashiok, Nightmare Weaver》を排除する。ターンエンドに予示を行ってターン終了。
稲川は《思考囲い/Thoughtseize》をプレイして、加藤の手札から《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》をディスカードさせる。残る加藤の手札は《旅するサテュロス/Voyaging Satyr》と《森の女人像/Sylvan Caryatid》。だが、《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》で開示されているトップは、《世界を目覚めさせる者、ニッサ/Nissa, Worldwaker》。
この《世界を目覚めさせる者、ニッサ/Nissa, Worldwaker》によって4/4となった《森/Forest》によって14点のダメージが叩きだされ、稲川のライフは3。
最後の望みをかけて《時を越えた探索/Dig Through Time》をプレイする稲川。そこにあったのは全体除去の《命運の核心/Crux of Fate》。
だが、《囁きの森の精霊/Whisperwood Elemental》を前にしては革新的な解決とはならないのだった。
稲川 1-2 加藤
加藤が緑単を選択した理由は、緑が好きだから、そうトップ8プロフィールには書いてある。
文字通り『信心』にしたがって選択をした加藤が、決勝へとコマをすすめる。
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